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【報告】「企業や大学という組織を超えた学びの学び」

更新日:2021年8月30日

8月5日に、当社団法人イベント「企業や大学という組織を超えた学びの学び」を開催しました。動画はこちらからご覧いただけます。


このイベントでは、ダイキン工業 執行役員 河原克己さんと JT R&D グループ 貫戸 和香子さんをゲストに迎え、当社代表理事 宮野公樹氏とゲストのお二人が行った産学連携について、何をしたか何を学んだかをうかがいながら、「『学び』の学び」について考えました。



「バラバラを認められる」感覚が「『学び』を学ぶ」キーワード?


産学連携というと、開発に直結するような理工系分野との共同研究が真っ先に思い浮かぶかもしれません。しかし、お二人が行ったのは「人文学的」な産学連携でした。


ダイキン工業では、「文理融合」というコンセプトのもと、京都大学との包括連携で哲学からイノベーションを起こそうという取り組みが行われました。中でも、宮野氏と河原さんが行ったのは、「100人ワールドカフェ」というイベントでした。このイベントでは、まず最初に、文理を問わずに京都大学の広い分野の研究者を複数のグループに分け、「空気・空間とは何か」をテーマにグループディスカッションを行い、「キーワード」を集めたそうです。さらにその後、ここで集まったキーワードを分析、分類、深堀し、知見を高めるという作業を行ったそうです。2013年に行われたこのイベントで、このコロナ禍のキーワードである「感染防止」という単語が既に出ていたというのが驚きでした。


一方 JT では、京都大学の人文学、社会科学の研究者の知識を活用し、たばこ・嗜好品の価値や本質をひたすら考え抜くプロジェクトを行ったそうです。貫戸さんを含めたプロジェクトの参加者は、学際や哲学分野の研究者との対話を通し、研究や開発に対する自分自身の芯を確立することができたそうです。その結果、自分の会社や会社の製品を改めて好きになったと、貫戸さんはお話してくれました。印象的だったのは、「哲学に向き合うと、『この仕事やってていいのかな』というようなモヤモヤが吹っ飛ぶ」という貫戸さんの言葉です。これは、プロジェクトを通して、貫戸さんがひたすら考え、自分の中に答えを出すことができたからではないかと感じました。


しかし、なぜ河原さんと貫戸さんは、理工学的ではなく人文学的な産学連携を行ったのでしょうか。その答えは、共通の問題意識である「目的設定の難しさ」にありました。情報に溢れ、変化が激しい現代社会では、理工学的な視点のみでは目的を定めることが難しくなっているとのこと。このような環境では国内の優秀な研究者や技術者の能力は抑制されてしまい、大きなイノベーションが起こりづらくなっているそうです。この状況を打開するためには、一人ひとりが、そしてチーム全体が、「こういう社会にしたいんだ」という自分なりのビジョンを持つことが大切であると、お二人は感じています。けれども、こうしたビジョンの獲得は理工学的な知見に基づくアプローチだけでは限界があり、「社会とは?」「自分とは?」といった問いに対する人文学的な知見やアプローチが必要となるのだそうです。そこで、お二人は人文学的な観点から産学連携に取り組んだわけです。


こうした人文学的な産学連携の経験から、河原さんは「『企業だけでは答えが出せない答え』の「答え」を考えるための刺激やヒントがたくさんもらえた」とお話してくれました。お二人が取り組まれた産学連携では、大学から答えが得られるわけではありませんでした。大学の知と連携して、まずは「問い」を作り、その問いの答えとなるヒントを提供してもらい、答えにたどり着くまでの思考過程の手助けをしてもらいながら、答えは企業自身、自分自身で出していったのです。また貫戸さんからは、「答えはプロジェクトに参加したメンバーでバラバラで、一つには収束しなかった」という話もしてくれました。研究や開発に従事しているような理系の方々は、答えが一意に決まらないことは気持ち悪く感じてしまいますよね。でも、貫戸さんによると、自分の答えに自信があったから、「バラバラでもいいじゃん」と、それぞれの答えに納得でき、多様な考えを認められるという貴重な経験ができたそうです。


さてここまで、「理系」vs「文系」という視点で今回のイベントについてまとめてきました。しかし、学問を大雑把に二分するこの区分は「学び」の本質ではありません。しかし、今回の記事のように、便宜上でも分野を区分けしないとものごとが説明しずらいという現状があるのも事実です。


『この現状こそを変えたい!』

『既存の分野の枠なんか外して、純粋に「知らない」ことを「学び合える」場を作りたい!』


これが当社団のねらいです。


今回のイベントで貫戸さんがお話ししてくれた「バラバラでもいいじゃん」と思える感覚、これこそが「『学び』の学び」に関する一つのキーワードだと思います。自分の在り方や生き方を気づく学びは、自分の中に芯をもつことにつながります。そして、自分に芯があるから、バラバラであること、つまり多様性を認めることができるわけです。しかし、貫戸さんが経験されたこの感覚を獲得するための学びを実践することは簡単ではありません。それは当社団も同じです。なので、まずは自分たちから成長すべく、これから色々活動していく予定です。

ぜひとも引き続き、当社団の活動に目を向けていただけると嬉しいです!次の活動もお楽しみに!

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